一針

 08,2015 10:00
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車で行ける範囲に「無人フリマ」がある。例えて言うなら,無人野菜直売所の洋服版。プレハブの一部屋になっている。ここの服は1点すべて100円。置いてくるのは無料。売り上げはすべてUNICEFに寄付される。

私も不要な服をここに置きに行き,そして時には買うこともある。
これまでにここで,子どものスキーウエア,イギリス製ウール100%アラン模様セーター,スイス製トレンチコート,プラダのズボン,リネンのシャツ,私の母は誂えものの黒の洒落たジャケットなどを手に入れたことがある。大部分は,たぶんもらっても着ないようなおばちゃんセーターとかくたびれた服だけど^_^;,その中に「ええ?!これが?」という意外な物のあるところが面白い。

一年のうち,結構思い切って物をドッサリ処分する「波」がやってくる私だけど,捨てないで持ち続けているものがある。
それは,今は亡き祖母が私の幼い頃縫ってくれた小さな「はんてん」。すごくレトロな柄。
裏を見ると,淡い色の布上に,祖母が一針一針縫い進めた糸がよく見えて,それを見るたび,こみあげてくるものがある。
祖母が生きていたこと,私のために手を動かし心を寄せて作ってくれたことそのものが,そこにある。

先日訪れたカフェのギャラリーで,「古物展」が開催されていた。開催者の目で選んだ,昔の人の使った「素敵な物たち」を展示即売。その中で目にした,大きな壁にかけられた,藍布をつぎはぎした薄布団。布団一杯に無数の継ぎはぎ。小さなほころびも丁寧に継ぎ当てして相当長い間使用していたのだろう。

それを見たとたん,祖母の縫ったあの一針一針とその糸とが重なって,私は泣き出してしまいそうだった。
その時代を確かに生きた誰かが,それを縫った行為と思いがある。

「これ,いいでしょう?」と展主に声をかけられ,私は「ど迫力ですね。もう泣き出しそうです」と言うのが精一杯だった。展主はたいそう喜んでくれて「そう思ってくれる人がいるなんて,すごく僕も嬉しいです」と言ってお互い,じ~んとした一瞬が過ぎた。

私が,手縫いの縫い目に弱いのはこのせい。祖母の縫ってくれた,あの「はんてん」の縫い目と重なるから。あの小さな縫い目に,祖母と私の間の大事な何かが映されてる。

一針・・・大事にしたいな,と思う雨降りの朝。




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Comment 2

2015.11.08
Sun
17:26

♪デコ♪ #gwQYCaNk

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あったか~ぁい時間でしたね。
心の籠ったものを幼い頃着たりしていると

大人になってある時ふと昔に返れる瞬間がある。

デコは昔母親に毛糸で編んだ適当なスカート
(適当とは本も見ず自己流で)

そんな昔を山麓さんの記事で想いだしていました。
デコ編み物は苦手ですがミシンでよく子供達に小さい頃簡単な服を作っていました。

大作は娘の幼稚園の浴衣でしたね。
あれは頑張った(#^.^#)

あったかい一針に心ほっこりです。

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2015.11.09
Mon
00:14

山麓 #-

URL

Re: タイトルなし

デコさん
デコさんの一針の思い出。私も温かい気持ちになりました。浴衣を縫ったとは,すごいですね!私も以前は子どもの服や自分の服を作っていたことがありますが,何せ大雑把で,気が長くないというか・・・やっつけ仕事で作る物はやっぱりそれなりの物しかできず,しばらくご無沙汰の今日です(-_-;)。でも,手づくりの物を見につけた記憶は,きっと心の底にそうっと蓄積していてくれるかもしれないですね。

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